《MUMEI》

「そろそろ…入っていいかな?」
「いいわよ、龍平」

仲村君達と入れ違いで、龍平さんが病室に入ってきた。

『そろそろ』って…

(もしかして…)

「龍平さん、いつから、そこに?」

「ん? 貴子が、病室入っていった辺りからですが…」


と言うことは。

貴子ちゃんのマシンガントークは、多分、聞かれていた、わけで。

「あの〜もしかして、見てたりは…」
「すみません」

龍平さんは、軽く頭を下げた。

(あぁ…)

龍平さんにも、『本来の私』を見られた。

うつ向く私に…

「あ、でも、義姉さんは、その方がいいと思いますよ」

と、龍平さんが言うので

「慰めは、いいです…」

私は、更に落ち込んだ。

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