《MUMEI》 渡辺さんは、警察署の外で話をする時は、相手が世間体を気にするから、『刑事さん』ではなく、『渡辺さん』と呼んでもらっていると言って笑った。 (そう思うなら…) 私はドラマに出てきそうな、『いかにも刑事』な外見も、整えるべきだと思った。 …あえて、口にはしなかったが。 「明日、退院だそうですね。おめでとうございます」 「…ありがとうございます」 私は一応お礼を言った。 「実は、何度も面会に来たんですが、ご家族のガードが固くて…」 「…すみません」 「いやいや、愛されてる証拠ですよ」 私が謝ると、渡辺さんが笑いながら言った。 「…ところで」 渡辺さんから、笑顔が消えた。 「実は、あなたにお願いがあるんですが…」 「お願い、ですか?」 私が首を傾げると、渡辺さんは頷いた。 そして… 「高原(たかはら) 良幸に、会ってもらえませんか?」 と、言った。 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |