《MUMEI》

その後。

息を切らせて病室に来た大兄さんに、私は、渡辺さんとの会話を伝えた。

…『携帯の男』発言を、除いて。

「大兄さん、私、会おうと思う」

私は、大兄さんの目を見て、きっぱりと言った。

「大丈夫、か?」

大兄さんは、心配そうに、確認してきた。

「うん」

私は、笑顔で頷いた。

私は、

『携帯の男』…

仲村君を

巻き込みたくなかった。


(それに…)


離婚が成立した時も…

東口トイレで襲われた時も…

私は、一度も、きちんと別れを言えなかった。

今度こそ、


…終わりにしたかった。

「仕方ないな」

大兄さんが、ため息をついた。

そして…

「一応、秀に付いて行ってもらえ」

と言った。

私が頷くと、大兄さんは、すぐに連絡をとりに行った。

その日は、なかなか眠れなかった。

仕方なく、私は、とんぷく用に出された睡眠薬を飲んで、眠りについた。

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