《MUMEI》

「藤田は佐藤が好きだね。」

「へ?」

ばれていた?

「友達なんでしょ?」

「はぁ、まあ……」

そっちのね。

「違うと思うかもしれないけど俺と七生も喧嘩してもう修復出来ないと思ったことあるよ。
七生ったら、急にキスしてくるんだもの。」

「その話もっと聞きたいです。」

木下先輩は俯きながら小さく頷いてまた話し始めた。

「幼なじみ、しかも同性にキスされて七生を見る度に図り知れない感情が沸き出てきた。
それこそ、裏切られたって思った。
なんか、ムカついたし惨めにもなったけど一番は悔しかったんだ。
俺は一番近くにいて七生を知っているはずなのに俺を好きになっていたことを気付けなかった。
知らない七生がいることが怖くて。


でもね、それは俺がただ理解しようとしていなかっただけだったんだ。

俺が理解が足らなくてもいつだって真っ正直にぶつかってきたし、俺のこと考えてくれていた。
新しい発見に類似点、知れば知るほど好きになった。

嘘偽りのない行動や言葉で互いを理解することが出来たんだ。
……長々しくごめんね。」

「いえ。」

俺の一言で木下先輩は安心して微笑んだ。

「藤田は佐藤に理解されたいんだろ?
理由を聞いてほしいんだ。
裏切ったのだって嘘をついてしまっていたからだろ?
嘘は駄目だよ。本当に理解されたいなら、自分から歩み寄らなきゃ。」

歩み寄る……。

「佐藤を苦しめる真実でも?」

きっと、佐藤は俺を拒絶する。
傷付いて涙する。

「佐藤と藤田は本当に仲良かったじゃないか。傷付けたとしてもさ、それだけじゃないだろ?
通う気持ちもある。

傷は、痕になったりするけれど癒えるよ。」

木下先輩の言うことは綺麗過ぎて綺麗事に聞こえない。信じたくなる。

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