《MUMEI》

「お前にそう呼ばれる筋合いはない」

秀兄さんは、良幸さんを睨むと、また、壁際に移動した。

そして、隣にいる渡辺さんに…

「あれが、あいつの本性ですよ」

と囁いた。

「…志穂」

今度は、良幸さんは泣きそうな顔になった。

「…何?」

私は、できるだけ、冷静に対応する事にした。

「仲村、は?」

「来ないわ。彼は、ただの、私の中学の同級生だから」

「本当に?」

「えぇ。…恋人も、ちゃんといる」

…恋人が、『男』だとは、言う必要が無いから、黙っていた。

「そう、か…」

良幸さんが納得したようなので、

「そうよ」

私は、駄目押しに、付け加えた。

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