《MUMEI》 「本当に、すみませんでした! あんな奴だったなんて」 「いえ、もういいですよ」 私が何度言っても、渡辺さんは頭を下げ続けた。 「…まだやってるぞ」 「…もう、いいんだけどね…」 秀兄さんの車が警察署を出て、見えなくなるまで、渡辺さんはずっと頭を下げていた。 「…偉かったな」 信号待ちの僅かな間、秀兄さんが優しく私の頭を撫でた。 私は、照れながら、笑顔を作った。 これで― 本当に… 良幸さんと、私は 二度と― 会うことは… なかった… 前へ |次へ |
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