《MUMEI》

「スゲー!片手でなんて!なんかやってたの?」


「はあ?こんなん普通だってよ」



割箸で玉子をかきまぜてヒーターのスイッチを切る。




「そういや塩入れたか?」


「塩?お粥って入れるの?」



「…塩寄越せ」




「だから何もないって」


「…おい!」




「あ、冷蔵庫にマックで貰ったガムシロップ入ってる」



「…お前が食うなら入れろ」



すると本当に持ってきやがった!



「合うかな?」


「もー勘弁してくれ…じゃー醤油は…」


「醤油なら!納豆用だけどね!」



今度はおかめ納豆の醤油を出してきた。


あーこれは結構いけるんじゃないかと思いながら少し垂らして蓋をした。




見ればこの家、炊飯器だけはある。


米だけはとりあえず炊けるらしい。




「お前、本当に何もしたことなさそうだな」

「え?何が?」




カップボードから皿なんか出してきている。



お粥は茶碗の方が良いなんて言うのは今更野暮だよな、きっと皿しかねーんだ。



とりあえず着てたもん着て小さなテーブルにつく。






「ガン見されちゃー食いずれーよ」


「だって初めて作ったんだもん」



「はーもう有難たくて涙が出そうだよ」



一口カレースプーンで食べる。



う〜ん?。



「美味しい?」




心配げに聞いてくる。



「美味いよ、ほら」



スプーンですくって口元に運ぶとぱくっと食べた。




「…美味しくない…」



「そっか?」



やっぱりお粥は塩の方が美味い。
納豆のタレは化学調味料臭くてお粥にはまるで合わねー。




てかさ、そんな事より、わざわざ作ってくれたっつーのが嬉しいんだよ。



やった事ねーなら尚更じゃねーか。



「残して?コンビニで買って来るから」
「そんな事言ってんじゃないの、だから美味いって」



「うん…」




「美味しいよ、有難う」



「うん…」



裕斗は膝立ちで俺の隣に来る。



俺の腕に絡みつきながら肩に頭を乗せてきた。



「もう大好き、今日は帰さない!」



「そりゃ困るよ、俺は付き合ってもない子の家に泊まる程軽くねーんだな」


「…秀幸」



「ん?」








「俺と…付き合って」

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