《MUMEI》

「お、ちゃんといるな」

私が玄関の扉を開けると、秀兄さんが入ってきた。

手には、旅行用バックと、たくさんのビニール袋を持っていた。

秀兄さんは、そのバックを私に手渡した。

中身は、私が入院中に使っていた荷物だった。

「洗濯物は、後で貴子が届けるからな」
「自分でやるのに…」

私は苦笑したが、秀兄さんに、

「いいから!」

と押しきられた。

(そうだ…)

私は、忘れないうちにと、スペアキーを秀兄さんに返しておいた。

「さてと…」

秀先輩は、慎君と祐希君がいるテーブルに、ビニール袋の中身をどんどん置いて行った。

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