《MUMEI》

「あと、これだろ?」

そう言って、秀兄さんは、冷えた缶ビールをいくつか置いていった。

そして、残りのビールと、ビニール袋の中身を、冷蔵庫に閉まいに来た。

中身は、明日の朝食の材料だった。

きっちり、三人分ある。

テーブルには、料理の湯気とおいしそうな匂いが立ち込めていた。

慎君と祐希君の目が輝いている。

視線の先には、缶ビールがあった。

(待てよ…)

仮に泊まるにしても、何の準備もしていない。

慎君は…

私のジャージでも、着れるが、…

祐希君は、着替を取りに行く必要がある。

私のマンションから、祐希君のアパートまでは、車で行かなければならない。

「秀兄さん、祐希君車なんだよ?駄目じゃない!」
私は、慌てて秀兄さんに抗議した。

しかし、秀兄さんはケロリとして、

「ん?大丈夫だろう?泊まっいけば?」

と答えた。

そして、慎君と祐希君に視線を向ける。

「…なぁ?」
「「…はい」」

でも…

「泊まる用意なんて…何も…」
「「「あ、大丈夫」」」

私の言葉に、他の三人が同時に答えた。


二人は既に貴子ちゃんから、『お泊まりセット』渡されたと、私に説明した。

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