《MUMEI》

「…で」



戻る方法、なんか思いついたか―と、聞いてみる。


蓬田は、無言で首を横に振る。



はぁ〜…



ため息を一つついて、ベッドに腰掛ける。



あ、


―…と、蓬田が小さくつぶやく。



「…もしかしてさ、事故の衝撃、関係あるんじゃないかな…??」



「…おお!!なるほど!!」



おれは感心して立ち上がった。



「よし、じゃあ…
もう一回同じことすれば戻るかもしんねえんだな!!?」



蓬田に提案すると、


真っ青な顔で勢いよくかぶりを振りながら、
だめだめ、と繰り返した。



「…なんで」



おれが訊くと、



「…椎名くん、死にたいの??」



呆れ顔で、返された。



あ。



そっか。



死んじゃー意味無いよな。




「…でも、じゃあどーすればいんだよ??」



もう一度訊くと、



「…わからない。でも…」


「でも??」


「…これから、いろいろ探すことはできるよ!!」



蓬田はそう言って、


顔を上げて、笑った。




「…そんな簡単に―…」




―…おれの言葉が途切れたのは、



シーツを握った蓬田の手が、





…小さく震えてたせいだった。

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