《MUMEI》

「…とりあえず!!」


沈黙を破ったのは、椎名くんだった。



「とりあえず、このまま…
入れ替わったまま生活するしかねーな」



私も、頷く。



「明日レントゲン撮ったら退院できるっぽいし」


「…レントゲン撮ったら、なにか分かるかもしれないしね」


「おお、そーだな!!」



椎名くんが、感心したように頷く。




「…じゃあ、今日は寝るか!!
―…朝になったら戻ってるように祈りながら寝るぞ!!」


「…うん」




椎名くんは、おやすみ、とだけ言って病室を後にした。



私も、寝よう―…



体制を変えたとき、




ズキン、



と、右腕が痛んだ。



包帯が巻かれた腕。


痛み止めが切れたのか、鈍い痛みが走る。



―…椎名くんが、私を庇って負った傷。


そっと、包帯に指を添える。



そういえば

『ありがとう』って、言ってないや…



私は無傷だった。


椎名くんが庇ってくれたお陰で。


痛みを引き受けられたのは、良かった―…



右腕に負担をかけないように横たわると、私は瞼を閉じた。



明日には、戻ってますように―…




…この傷の痛みなら、引き受けるから。

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