《MUMEI》
朝 〈私〉
今朝は自然と目が覚めた。


体を起こす。


…なんだかものすごく変な夢、見た気がする…


あくびを1つ。



…ん??


ここ、私の部屋じゃない。



消毒液のにおい―…



…病院!?



私ははっとして鏡を見る。



映ったのは、椎名くんの顔。



「…夢じゃ、ない…」



力が抜けて、布団に突っ伏した。



「椎名くん、起きてたの」



顔を上げると、そこには看護婦さん。


にっこりと微笑みかけてくれた。



私も微笑み返すと、看護婦さんは慌てたように



「き、今日はレントゲン撮ったら帰れますからね!!頑張って!!」



そう言うと、病室を出て行ってしまった。



看護婦さんが出て行った病室のドアの裏から、
『きゃー』だの『かわいー』だのと、


看護婦さん(たぶん複数)の黄色い声が聞こえてきた。


…やるな、椎名くん。



そんなことを思っていると、



「…椎名くん…??」



ママが、いつのまにか病室の入り口に立っていた。



「…マ―…蓬田さんの、お母さん!!」



…あ、危なかった…!!!




「…どうぞ」



私はママに、病室に入るように促した。

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