《MUMEI》
携帯 〈おれ〉
レントゲンを撮り終えて、帰りの準備をしてるときだった。



おれは、棚の上で光っている携帯に目を留めた。



…これ、蓬田の…??



おれは、携帯を手に取ると
205号室に向かった。


開いたままのドアから顔を覗かせると、



病室には、師匠がいた。


片付けの手伝い、来てくれたんだ―…



「…こんにちは!!」



挨拶すると、



「おお、こんにちは!!
…みつるに、用事か??」



と師匠が笑ったので、頷いた。



「おい、みつる〜!!
お客さん!!!」




師匠が振り返って呼ぶ。



少しの間のあと、蓬田が顔を出した。



おれは持っていた携帯を持ち上げた。


すると、蓬田は一旦顔を引っ込めると、

次はおれの携帯を持って出てきた。



「…あの〜…よも…椎名くん、借りていいですか??」



おれが師匠に聞くと、



「おう!!いくらでも借りてけ〜!!」



と、蓬田を差し出した。



「…でも、準備…!!」



蓬田が慌てて言うと、



「それくらい、オレがやっとくから!!行って来い!」



師匠はそう言って、蓬田の背中を押した。



「あ、ありがとうございます…」



蓬田が、ぺこりとお辞儀する。



「…んな改まんなって!!
―…みつるも、スミに置けねえなぁ」



にやにやと意味深な笑みを浮かべる師匠。



…スミに置けない??



―…何を???



おれが眉をひそめると、




「そっそんなんじゃ無いですから!!
…行こ!!」



蓬田は、慌てたようにおれの手を掴むと、



病室を飛び出した。



…そんなんじゃないって…??


―…何が???

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