《MUMEI》

すると、突然。

「まぁ、いいや。…俺の事は。それより、慎が初恋の君ってどういう事だ?」
祐希君が話題を変えた。

「え?!」

(何?急に?)

不意をつかれて、私は戸惑ってしまった。

顔が、みるみる赤くなっていくのがわかる。

「なぁー、慎だって知りたいよな?」
「あぁ、…まぁ」

ニヤニヤする祐希君に、慎君が、同意した。

…しないで、ほしかった。
「聞く権利、あるよな?」
「う…」

祐希君は、上機嫌だった。

(私より優位に立てた事が、そんなに嬉しいの?)

私は…

「わ、私、疲れたから!今日はいろいろあったし!
お風呂入って寝るね!
客間、そこだから!」

…とにかく、この場から、離れる事にした。

そして、慌てて立ち上がった。

「逃げる気か?」

図星だったが…

「疲れたの!」

私は、適当な言い訳を言って、祐希君を睨んだ。

―私が足元に注意しなかったので

ガッ

(しまった)

私は、勢い余って、机の角に腰をぶつけてしまった。
そのまま、バランスを崩す。

(倒れ、る…)

―その時

向かいに座っていた慎君が、手を伸ばして、私の体を支えてくれた。

(あ…)

慎君の手が

私の…

胸、に…

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