《MUMEI》
帰宅 〈おれ〉
病院を出て、蓬田のお母さんが呼んだタクシーで20分程度。


タクシーは、でかい家の前で止まった。


先にタクシーを降りた蓬田のお母さんは、



「おかえり」



そう言って、おれの手をひくと、タクシーから降ろした。



…蓬田んち、金持ちだったんだな…



洋風の庭には綺麗な花が咲き乱れ、
絵本にでも出てきそうなバルコニーがある。



うわぁ…メルヘン…



やっていけるだろーかと不安でいると、
蓬田のお母さんがメルヘンの扉(玄関)を開いた。


すると、



『きゃんきゃん!!』



甲高い鳴き声と共に、ちっこい犬が
おれたちを出迎えるべく走ってきた。



「あら、ゴジラ〜!!」



そう言って、蓬田のお母さんが、
そいつの頭を撫でる。


…ゴジラって…こいつ!?



無駄に目がでかくて、細い足は折れそうだ。


どー考えても、ミスマッチ。



「ほら、かなめも!!
…この子、寂しがってたのよ??」



そう促されて、おれはゴジラに手を伸ばした。



すると。




『ヴ〜…』



いきなり、ゴジラの顔が険しくなり、唸られた。


驚いて手をひっこめる。



「あら、どうしたのかしら??
知らない人にも、ほとんど人見知りしない子なのに…
拗ねちゃったのかしら??」



不思議そうにそう言うと、
蓬田のお母さんは、再びゴジラの頭を撫でた。



気持ちよさそうに目を細めるゴジラ。


おれが立ち尽くしていると、
そいつはおれをチラッと横目で見て、




はん、とバカにしたように笑った。



…よーな気がした。

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