《MUMEI》

「俺、佐藤が好きだ。」

よく分からない自分の中で唯一はっきりしている気持ちがこれだ。

「なんでさ、夏川にしても藤田にしてもそうなのかな。好きだから、好きなら勝手にキスしていい訳?
これは俺のモノだ……どうして好きなら我慢しないの?こんなに俺を悲しくさせんの?」

佐藤が両腕で自身を支える。



「佐藤は好きな人が出来て、どうしようもなく気持ちが溢れたことあるの?」

きょとん、と佐藤は俺を見た。

「俺は、あるよ?     佐藤が好きだ。大好きみたいだ。」

最初から知っていたみたいに、言える。
これは告白だ。懺悔にも似た告白。

「……あ…… 」

佐藤がその場にへたり込む。俯いて後頭部を見せた。

「佐藤?」

手を差し出すと片手で払われた。

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