《MUMEI》 湯船に入る前に、私は、髪と全身を洗う。 (…楽になったな) 髪を洗う時、ふとそんな事を考えていた。 長く美しい黒髪を維持するのは、大変だった。 次は、体。 特に、体は、念入りに洗う。 醜い… 汚い… 私の、体。 私は、ボディーソープをタオルに付け、念入りに泡立てて、丁寧に、何度も、洗う。 何度も、何度も。 …落ちる筈のない汚れを、洗う。 … 私の、胸元。 腹部。 背中。 そこには、 …良幸さんが、 『自分の物』だと …『愛する証』と… 付けた カッターによる切り傷と… タバコを押し付けてできた火傷の跡が… 数えきれない、ほど あった。 これが、私が… 『好きな人と付き合えない』 理由だった。 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |