《MUMEI》 「まったく、しょうがないな、志穂は」 そう言った良幸さんの手に握られていたのは… カッター 私は、震え出した。 「大丈夫。印付けるだけだから」 「…ン…ウッ…」 最初に、付けられたのは、 「これで、そんな男を誘惑する服着れないな」 キャミソールから見えていた、私の鎖骨の近くにできた、一筋の、切り傷だった。 ―それから。 行為の前に、カッターで一筋、切り傷をつけて… 『傷跡が残りやすいから』という理由で、行為後、良幸さんがいつも吸っていた火の付いたタバコを一本、押しつける。 ―その、繰り返しだった。 決まって、言う言葉も、いつも、同じ。 「愛してる」 だった。 前へ |次へ |
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