《MUMEI》

シャワーを浴びた祐希君は、バスタオル一枚で、戻ってきた。

私と違い、その体には、傷一つ見当たらなかった。

彼は、その綺麗な体で、綺麗な慎君を、わたしの好きな人を、抱く、のだ。

「あのね…そんな格好で来ないでくれる?」
「は?」

祐希君が、冷蔵庫を開けながら、振り返った。

私は、祐希君を睨んだ。
嫉妬で、顔が赤くなったような気がした。

「別に、俺の裸なんか興味無いだろ」
「それは、そうだけど…目のやり場に、困るのよ。
一応、私、女なのよ?」

本当の事を言えない私は、もっともらしい理由を言って、祐希君から顔を背けた。

祐希君は、ミネラルウォーターペットボトルを取り出し、冷蔵庫を閉めた。

このまま部屋に戻るのだろうと思った。

コトン

ペットボトルを机に置く音がした。

私に伸びてくる、祐希君の手の気配を感じて、私はその手を弾き返そうとした。

パシッ!

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