《MUMEI》

祐希君が、私の手首を掴んだ。

(…悔しい)

入院生活が長かったせいか、私の動きにいつものキレや力強さは無くなっていたのだ。

「…っ」
「いつかの逆、だな」

そんな私を見て、嬉しそうに笑って祐希君は、…

ダンッ!

私のもう片方の手首も掴み、私を壁際に追い詰めた。
「な…に…?」
過去の恐怖が蘇りそうになりながらも、私は祐希君は『女は駄目』な人だと自分に言い聞かせ、祐希君を見上げた。

「ん? せっかく俺を男として見てくれたから、サービスしようと思って」

祐希君は、私の両手首を片手で私の頭上に押しつけると、自由になったもう片方の手の親指で、私の唇を撫でた。

(サービス?)

「『初恋の君』と間接キス、してみる?」

(からかわれてる…)

私は、祐希君の両足の間に自分の足を絡めた。

―そして…

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