《MUMEI》

「その口で、何人口説いてきたんだ?」

力、抜けた。
慌てて虚勢を張る。


「本気になったのは佐藤だけだよ。」

嘘つけよ。

「遊びはしてたんだ。」

「………………」

してんじゃん。

影が出来ていた。藤田が間近に膝を立てている。

「誰かを好きになれないって思っていた。女子と付き合うことはしてけど夢中になれなかった。
対象が異性じゃないと気が付いても。
誰にも打ち明けないで一人で流されて人生の幕を閉じる覚悟してた。」

墓場まで持っていくって覚悟か。

「俺である必要性はないんじゃない?
ぱっとしない見た目だし、俺なんて普通の高校生と違いはないよ。」

何処にも特別な要素は含まれない筈だ。

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