《MUMEI》 私は、苦笑しながら震える声で言った。 考えてみたら、傷跡を自分から見せたのは、祐希君が初めてだった。 「だから、私と慎君が、そういう事になる事はないから安心して」 私は、そう言って、ボタンをとめながら笑った。 祐希君は、罪悪感を感じたようだった。 「悪かったな。 そういえば、今日は、その、大丈夫だったか? …警察」 「…正確には、警察で刑務所の住所聞いて、そこで面会したんだけどね。 …いつもと同じで、ひたすら、謝られたわ。 あの人は、自分では私を傷付けたくないと思っていても、どうしても、そういう、衝動…暴力を抑えきれないのよ」 傷付ける事でしか、愛情を表現できない良幸さんは、傷付けた後は、急に優しくなった。 だから、私は… なかなか別れられなかった。 祐希君に説明する私の声は、先程よりは、しっかりしていた。 「そ、…ハッ、ハクション!」 祐希君が、大きなくしゃみをしたので、私は思わず笑ってしまった。 「もう、九月も終わりなのよ?いつまでもそんな格好してたら風邪引くわよ?」 私の言葉に、祐希君は、無言で机の上のペットボトルを持ち、私を追い詰めた時に、床に落とした衣類を拾った。 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |