《MUMEI》 騒乱「たまんねぇぜ。くっくっく・・次は三発だ。どう防ぐ!?」 ズドン!!ズドン!!ズドン!! 楽しみに肩を震わせながら、冷酷な色を宿した瞳を細め、銃を撃ち放つ。 ロゼが引き出したのは古びた一本の槍。 「起きなさい、グングニル!!」 ギギギィン!! ロゼが槍に魔力を流すと同時、槍の形状が変化しその姿を露にする。 神代の聖槍と呼ばれる「グングニル」 狙ったモノを決して外さないと伝説に謳われる槍はその力を存分に発揮し、正確無比な軌道を描き銃弾を穿つ。 「貫け!」 ロゼが「グングニル」投げ放つ。 「はっは・・やってくれる。全部叩き落す所か・・突きで止めやがった!」 狂気に彩られた笑いを浮かべながらギリスが覗くスコープの中で閃光が閃いた。 光の帯を引きながら投げ放たれた「グングニル」はギリス達が居る場所へと飛び、途中にあった多数の結界を容易く打ち貫き、ギリスの構える銃の銃身を完全に貫き元の古びた姿に戻り、空間の裂け目に吸い込まれるように消えていった。 「全軍、敵はあそこです。突撃せよ!!」 視覚妨害などの多重結界を貫通した「グングニル」のお陰で敵軍の位置は丸見え、ロゼは突撃命令を出すと、近衛騎士の一人が寄せた馬に乗る。 「・・・やはり、私では使いこなせませんか。」 誰にも聞こえぬようにロゼが一言漏らすと再び長剣を抜く。 「グングニル」を使ったため、魔力の半分以上を失っている。 槍がロゼを持ち主と認めていない為、使用するには膨大な魔力を使う。本来の姿で使えるのは10秒から20秒程度。 一瞬にして大量の魔力を失った疲労で、息が上がるがそれを隠すように騎馬を走らせ軍の先頭に立つ。 「こちらの位置がバレたようだな。遊びは終わりだ、迎撃用意!!」 魔道士風の男が号令をかける。背後に控えていた5千近くの兵が一斉に武器を構える音が響く。 「まさか、あんな槍まで持ってやがるなんてな、ますます興味が沸くぜ。ローエン、俺も前に出るからな!!狙撃も良いが・・お姫様は零距離で撃ち抜いてやる方が面白そうだ。」 懐から取り出すのは変わった形状の銃。幾つかの宝珠が填め込まれている所を見ると魔導銃に近いものだと解る。 火薬式の通常銃は大陸ならば簡単に手に入れることが出来るが、魔法に比べ、攻撃力の低さなどから好んで持ち歩く者は少ない。 また使用される場合も一部の冒険者などが補助的な役割で持ち歩く事が主なため、それほど大型の銃も開発されていない。 高い火力を誇る魔導銃はフィリアス教の秘匿技術ではある為出回っていないものの各国で同じような研究はされている。 「ギリス、可能ならば生け捕れ。あれを捕縛できれば皇国は一気に崩れる。」 ローエンと呼ばれた男が銃を構えるギリスに声をかける。 「期待せずに待ってろ。」 「まぁいい。こちらも全力でやるだけだ・・汝が力ココに遣わせん。貪欲を司りし神よ・・開かれし顎は地をも飲み砕く。アーズィ・バイト!」 ローエンの前面に魔法陣が展開。漆黒の大きな球体が現れ、バクリと裂ける。 裂け目に並ぶは鋭い牙の列。 それが数十個。一斉に近衛騎士達に向かって歪な口を大きく開けながら飛んでいく。 その後に続くギリス達5千のコーリア軍。 「アーズィ・バイト」闇系第5位の精霊術。冥府に繋がれている貪欲の神の力の一部を呼び起こす召還術。その顎には強い呪いが罹っており傷を受けると全身が腐っていく。 「行くぜぇぇぇえええ!!」 前へ |次へ |
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