《MUMEI》 ホンノ、些細ナ黎明、温い霧が掛かり、肌を湿らせ心地悪くて仕方ない。 心地悪いと云えば此の環境が招いたことか。 遅滞な車に揺られ片田舎に近くなるにつれ後悔ばかりが募る。 俺には親が無く、下男として都会の何処かの成金貴族に雇われていた。 与えられた仕事をこなすことは厭でなかったし、何より、最初に引き取られた家に舞い戻るよりかは幾分かは良い。 商家で物心ついたときから働かされていて、主人はお世辞にも寛大とは云えないような強欲さがあった。 商人の才が俺にあると気付き始めたら主人は留守を任せて、俺が上手く売って浮いた金で遊び歩くことも屡だった。 赤字まで金を使い込めば主人は嘘八百を並べ立て女将に俺が使ったと宣った。女将も決まって俺を火鉢棒やらで打ち付ける。 女遊びに現を抜かす放蕩男への憂さを晴らす為。 主人の娘さんは女学生で、たまに廊下を掃除しているのを擦れ違う程度だった。 しかし、彼女が寮から帰ると何かいやらしい空気を醸していることくらいは気付かない筈もない。 学院では一体どのようなことを教わってきたのか。 柱に寄り掛かり、廊下の端に辿り着くまで待ち伏せられた。 前へ |次へ |
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