《MUMEI》
揺ラメキ
「病院にもう一度行っておいでなさい。」

当初の瞼の腫れも引いて残るは打撲傷と損傷した肋骨だ。
リハビリ程度の窓拭きしか出来なかったが足も軽くなった。


俺を拾ったのは金持ちの道楽で済まされない程、熱心に学を教え込まれた。

こんなにも待遇される理由を病院で識る羽目になる。

以前より若い医師の診察だった。

「氏永 林太郎君?」

はらゝと涙を流す医師は圓谷 春三と名乗る。北王子男爵家四男だと云う。

俺を亡くなった長兄に生き写しだと涙ながらに話し始めた。




俺の母は北王子家の女中で、父である北王子家の跡目と愛し合い俺を身篭り、祖父の大反対に合って身を引いたという。

雇い主があんなによくしてくれたのは北王子家の元下男で俺の祖父にあたる男に恩義があるからだったそうだ。

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