《MUMEI》

それから、一時間ほど、食休みした後。

まだ眠そうな祐希君が、
「俺、アパートに帰って寝直す。…慎、どうする?」と言い出した。

慎君は、少し考えて、
「ん〜、家に帰ってゆっくりするかな」
と返事をした。

「大丈夫か?」

帰り際、玄関先で慎君が、私を心配してくれた。

私は、
「うん、いろいろありがとう」
と笑顔で答えた。

その気遣いが、本当に嬉しかった。

私の顔を見て、慎君は安心したようだった。

「いろいろ、悪かったな」
「いいわよ、別に」

祐希君の『いろいろ』は、本当に、『いろいろ』だったが、私は、水に流す事にした。

「じゃ、帰るか」
慎君が祐希君に声をかけると、祐希君は大きく頷いた。

「また、メールするね」
そう言って、私は笑顔で二人を見送った。

それから、私は、二人の脱いだ衣類と、自分の洗濯物を一緒に洗濯した。

昔から、父や兄達の洗濯もしてきたから、特に抵抗はなかった。

(私が着るわけにもいかないし…)

泊まってくれたお礼代わりに、次に会った時に渡す事にした。

それから、兄妹に、お礼のメールを打った。

特に、大兄さんには、『三人で過ごしたけど大丈夫だった』事を、強調しておいた。

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