《MUMEI》

私は、最後は自信無さそうに、小声で説明した。

実は、秀兄さんは、料理は得意だが、お菓子作りは何故か苦手だった。

だから、一応、他にすることがなかったし、私がケーキ担当になっていた。

「手作りケーキなんてすごいね」
「…そんな事無いよ」
慎君がほめるてくれたので、私は照れてうつむいていた。

実際、ケーキ作りは、本を見て、その通りに作るだけだから、簡単だった。

秀兄さんは、『それが大変なんだ』と言っていたが、…私はよくわからなかった。

(あれかな?)

私は、学生時代のテストを思い出していた。

私は応用がなかなかできなくて、基礎問題で、点数を稼ぐが…

秀兄さんは、何故か、応用問題が得意なのに、簡単な基礎問題で時々間違える。
点数的に、応用問題の方が高いから、秀兄さんは成績もそれなりに良かったが…
基礎的な作業ばかりのお菓子作りは、秀兄さんには向いていないのかもしれない。

その分、感覚で味付けをしたり、感性で盛り付けをしたり、新しい創作料理を考える事が得意だから、仕事に支障は無い。

幸い、中華料理店では、あまり凝ったデザートは必要無かったし。

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