《MUMEI》

「…というわけで、志穂ちゃん、ケーキよろしく」
「は?」
また、突然祐希君の話が飛んだので、私は首を傾げた。

「いいじゃん。イブ用の、リハーサルだと思えば。
な、慎も食べたいよな」
「あぁ、…まぁ」

慎君が、甘いものが好きなのは、中学時代から知っている。
しかし…祐希君が、『私の手作りケーキ』を要求する理由がわからなかった。

少し迷ったが、私は…

「いいよ。
あんまり期待しないでよね」

と、渋々了解した。

「サンキュー、俺と慎のために、一つよろしく。
あ、ここは俺がおごるよ」
祐希君はそう言うと、店主に三人分のチャーシューメン代を払いに行った。

「あれは…試されてるのかしら?」
「? 何を?」

祐希君の後ろ姿を見つつ、呟いた私の言葉に、慎君が気付いて質問してきた。

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