《MUMEI》

「…私が、クリスマスという『恋人達のイベント』を、慎君と祐希君が二人で過ごすのを、ちゃんと認めてるかどうか…」
「…今更じゃないか、それ?」

(そうよね…)

私は、慎君の言葉に納得しつつも、祐希君の気持ちも何となくわかった。

(多分)

「…心配なんじゃない?慎君が好きなのよ、それだけ」
…だと、私は思った。

でも、祐希君は、慎君を束縛したりはしない。

あくまでも、慎君の意志を尊重している。

私は、ほんの、少しだけ

慎君が

羨ましく思えた。

慎君が私の言葉に照れているところに、祐希君が戻ってきた。

「…何で、慎が照れてるわけ?」

私達を見下ろす祐希君の顔は、不機嫌になっていた。
「カラオケ行ったら教えてあげるわよ」

そう言うと、私は慎君と同時に立ち上がった。

そして、店を出ると、慎君と祐希君の腕を掴んで、歩き出した。

最近、私がこうやって、『友達』として二人に同時に触る場合なら、祐希君は許してくれていた。

フフッと、志穂が笑って言った。

「両手に花、ね」

―と。

慎君は、もちろん…

口には出さないけど、祐希君も、強く凛とした花だと、私は思った。

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