《MUMEI》

数分後。

貴子ちゃんの車は、予定通り祐希君のアパートに到着した。

「あ、龍平からだ」

エンジンを止めた貴子ちゃんは、携帯を見つめた。

「じゃ、私行ってくるね」
私は車を降りて、祐希君の部屋に向かった。

多分、慎君も休みだと言っていたから、もう、いるだろう。

(一応、昨日、メールしたし…)

まだ、昼間だから。

(大丈夫、よね?)

私は、緊張しながら玄関のチャイムを鳴らした。

「は―い」
扉の向こうから、慎君の声が聞こえた。

ガチャッ

(良かった)

扉を開けた慎君は、きちんと洋服を着ていた。

慌てて着た感じもない。

「メリークリスマス」
「あ、あぁ」

照れながら私が笑うと、慎君もつられて照れていた。
「はい、これ。頼まれたもの。…祐希君は?」

「あっちでDVD観てる」

私から、ケーキの入った箱を受け取りながら、慎君が答えた。

「…貴子さんは?」
「下で待ってる。じゃあ、後、…これ」

私はコートから、封筒を出した。

「? 何? これ?」
「二人に、クリスマスプレゼント」

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