《MUMEI》

私と祐希君は、同時に微笑んでいた。

「いいのよ、慎君は」
「そうそう」

(多分)

今、祐希君と私が考えていたのは、同じ事だと思った。

慎君は納得出来ないでいたが、私は貴子ちゃんが待っていたし、祐希君もチキンを取りに行くからと、二人同時に部屋を出た。

…ただし、私は、玄関で話していたから、部屋の中には入っていない。

祐希君のアパートは鉄筋コンクリートの三階建てで、部屋は三階にあった。

部屋の前の通路から、階段に差し掛かるところで、祐希君が、私に『話がある』と声をかけた。

下には、貴子ちゃんがいる。

きっと、貴子ちゃんの前では言えない話だろうが…

長話は、できない。

祐希君は、私の気持ちがわかっていたようで…

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