《MUMEI》

「じゃ、これ、有り難く使わせてもらうな」
「どうぞ、私も使わせてもらうし」

私と祐希君は、中身を封筒にしまうと、階段を下りていった。

「じゃあね」
「あぁ」

駐車場で、軽く言葉を交わすと、祐希君は自分の車に、私は貴子ちゃんの車に、それぞれ乗り込んだ。

そして、私達は右折。
向こうは左折して行った。
「ケーキのお礼も無いわけ?」
貴子ちゃんは、手ぶらで戻ってきた私に不満を言った。
「ちゃんと、もらったわよ」

「…そう?」
「うん」
私が、封筒を見せると、貴子ちゃんは、一応納得したようだった。

「お姉ちゃん、この後空いてる?」
「大丈夫だけど?」

私の言葉に、貴子ちゃんの顔が輝いた。

「龍平が、お姉ちゃんにラッピング頼みたいって」
「それくらいなら、いいけど…」

私の言葉に、貴子ちゃんは、『助かった』と呟いた。
(そうだ)

一応、私は
「あ、明日も空いてるけど、クリスマスは、駄目だからね」
と付け加えた。

「デート?!」
私の言葉に、貴子ちゃんが、ニヤニヤしながら、訊いてきた。

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