《MUMEI》
特技と才能
(うわ…)

私と貴子ちゃんが龍平さんのショップに到着した時、そこは既に、戦場と化していた。

龍平さんの『特技』を知っている常連客は、龍平さんを捕まえては、次々に洋服を購入していた。

代金は、もちろん、隣にいる恋人が支払う。

可哀想に、彼等は皆財布を何度も眺めては、ため息をついていた。

また、店内はバックや靴などの小物も多数あり、それだけを買いにきた男性客や、恋人同士も結構いた。

普段は龍平さんと、四人のスタッフがローテーションで、二〜三人でショップを営業しているが、今日は、五人全員出勤していた。

それでも、私と貴子ちゃんの手が必要なほど、店内は込み合っていた。

貴子ちゃんは、レジにいたスタッフと交代し、会計係に専念していた。

私は、隣のサービスカウンターに入って、ラッピングを手伝う。

プレゼント用には、包装紙が四種類と、リボンが三種類ある。

品物には番号札と、包装紙番号とリボン番号が書かれたメモが置いてあった。

ラッピングが終了した物をショップの袋に入れ、番号札の番号を持つお客様を店内放送で、呼び出し、お客様に渡してお見送りする。
…ここまでが、ラッピング担当の仕事だった。

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