《MUMEI》

―それから。

貴子ちゃんは、すごいスピードで、会計を次々とこなし。

私は、黙々とラッピングを続け。

ラッピング担当だった女性スタッフは、店内放送とお見送りに専念した。

なかなか、バランスがとれているようで、お客様をそれほど待たせる事もなくなった。

ラッピングに慣れてきた私は、手を動かしつつ、他のスタッフを見る余裕も出てきた。

(…ん?)

私は、龍平さん以外の三人のスタッフの動きに、違和感を覚えた。

(あ、そうか)

担当エリアがおかしい事に、私は気付いた。

龍平さんは、洋服・バック・靴・帽子・小物全てバランスよくセンスがいいし、判断が早いが、他の三人には、得意分野がそれぞれある。

それが、今日は何故かどちらかと言えば、苦手分野の担当になってしまっている。

もちろん、苦手といっても、それほど変な商品をすすめたりはしていないが、…
やっぱり

選ぶのに、迷いがある。

今は、お客様からクレームは来ていないが、閉店間際や、明日は、急いで来るお客様が多くなる…と思う。
時刻は、午後六時。

閉店まで、四時間ある。

そこへ…

「義姉さん! すみませんが、閉店までお願いできますか?」

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