《MUMEI》 とりあえず野球が好きだ中学でそれなりに野球をした。それなりにといっても結構好きだったし。 高校には野球の推薦で入学して、それなりに俺の人生は野球だった。 だから最後まで野球と共に生きようと思った、高三の秋。 つまりは「今」である。 俺は天宮祐輔。朝日頼(アサヒヨリ)高校に通う高三のDK。 通称「朝高」は野球に力を注いでいる学校で、県では常にベスト4に入るくらいの強さを誇っている。 当然俺は推薦だからレギュラー・・・というわけではなく、ベンチ入りしている程度の一選手だった。 俺は60人近くいる部員の中で、だいたい15番くらいの上手さらしかった。 60人中キャッチ志望は7人。そう、俺のポジションはキャッチャーで、順位的に3番。 そこそこ活躍はしてきた。 まあ引退間際の高三が昔を語ってもしょうがないけど。 話を戻してみよう。 それで、俺は人生を野球に懸けようと思ったわけだよ。 だけどプロになろうとは思わなかったわけ。 他の野球部の奴らはそっちに行く奴らはやっぱ上の奴ら。ドラフト来た奴もいるしさ。 そいつ今なぜか俺にのしかかってモンハンやってるし、必死に人生考えてる俺を馬鹿にしてないかコイツ。 「ゆーすけ」 エース橘 彰太は俺の背中に顔をうずめた。 コイツは朝高のエースのくせに身長は170ない細身だ。 それなのに放つ球はえげつない。 「彰太、今話し掛けたらベッドから振り落とすぞ」 今の状況を説明すると、in俺の部屋。俺と彰太inベッド(別に怪しい意味ではない)。俯せの俺(手に雑誌)on俯せの彰太。 いわゆる「たれぱんだ」だ。(古いな) 「人生って?」 「ん、野球と共に生きて行こうかと」 「じゃプロになるんだ」 おい、俺今話し掛けたら振り落とすって言ったよな。 いいか。(俺はO型だ) 「・・・なるわけないじゃん」 「野球と共に生きて行くって言ったじゃん」 「プロとは言ってない」 拗ねた様子の彰太が背中で身体をよじったらしい。 手に持っているPSPが俺の頭に当たる感覚がわかった。 「・・・あ、俺わかったぁ」 「は?」 「祐輔が高校卒業したあとなりたいもの」 「・・・何」 彰太は頬杖をついた。肘が背中越しに痛い。 「・・・審判でしょ!」 「・・・・・・・・・・・・は?」 身体を捩って彰太の顔を見た。 あぁ、自信に溢れたなんていい顔。 次へ |
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