《MUMEI》

アナウンスが流れ、電車が入ってきて、扉が開いた。

さすがに中は混雑していたが、密着しつつも、何とか二人で座る事ができた。

密着していて、私はドキドキしてしていた。

(そうだ)

「これは、不可抗力だよね?」
私が、確認すると…

「ん?」
慎君は、意味が分からない様子で首を傾げた。

「慎君に触ると、祐希君に怒られるから」
と、私は軽い口調で説明した。

「仕方ないよ、これは」

「…そうよね。私から触ったわけじゃないし」

(良かった)

私は安心した。

それから慎君は、無言でずっと何か考え込んでいた。
あまりにも真剣だったから、邪魔をしてはいけないと思い、私も、無言だった。
私達は電車を降りるまで、無言だった。

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