《MUMEI》 「私、変な寝言とか言った?」 結局私は真剣な表情で、考えていたのとは別の質問をした。 慎君は、笑っていた。 「やっぱり?!」 私は、慌てる『フリ』をしてみた。 実際は寝たふりだから、寝言なんて、聞いているはずはない。 「あぁ、『慎君大好きよ、ずっと』って…」 (まさか、起きてた?) 「…」 思いがけない言葉に、私は無言で耳まで真っ赤になってしまった。 「え、し…」 「おかえりなさいませ」 慎君が話しかけようとすると、係員がドアを開けた。 (逃げよう!) 私は飛び出した。 「お、おい!待てよ!」 慎君が、慌てて追いかけてくる。 いつもの私なら逃げ切れる…はずだった。 しかし、今日、私は、今朝初めて履いたばかりのハイヒールのロングブーツで。 慎君は、履きなれたスニーカーだった。 それに、何故か人混みに紛れても、慎君はまっすぐ私を追ってきた。 前へ |次へ |
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