《MUMEI》

「イヤー!ロイ様ぁ!」

王が玩具を使って巧みにローズにちょっかいをだした。

素早くローズはロイの後ろに隠れる。

「王、見てて下さい」

ロイは何か唱えると手の平の金貨は天井に届きそうなくらい跳ね上がり、それを捕まえたと思われる手を王に見せた。

「……無くなった!」

王は興味津々といった風に集中している。

ロイは二回手を叩いてから自らのポケットを探った。

金貨が取り出される。

「どんな魔法使ったの!」

「手品です。ロイ様は器用ですから。」

ローズは自分のことのように誇らしげだった。

「ローズの裁縫の腕には負けるよ。そうそう、ローズの腕前を見せるためにも針と糸を買いに行きたいのですが。」

ロイの言葉にローズは小さく安堵の一息を吐く。
ぼろきれのようなくまをローズは離そうとしなかった。

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