《MUMEI》

大兄さんがサラッと言った。

「それって…」

楓さんが、目を潤ませた。
「とりあえず、これ」

大兄さんが指輪を取り出して…

楓さんの、右手の薬指に

はめた。

…婚約指輪、だ。

「おめでとう」×5

(いいなあ…)

幸せそうな二人を、私は羨ましく思った。

その時、メイファさんが、私の肩を叩いた。

?

メイファさんは、笑顔で…
「大丈夫ですよ。果穂さん、志穂さんのお相手も、ちゃんと探してますから」

と囁いた。

私は、無言で苦笑いをした。

(やっぱり、探してるんだ、母さん)

秀兄さんみたいに、候補が来ないから、安心していたけれど…

確実に、『お試し期間』は、終わりに近付いている。
今日が、終われば…

残りは、三ヶ月。

それまでに、慎君と、

『SEXか、婚約』なんて…
(絶対、無理)

私は、絶望的な気持ちで、新年を迎えた。

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