《MUMEI》 こだわんなよあーあ こいつは何を言い出すか。 「つーか何で審判?」 「好きだから」 「野球が?」 「だってそうなんでしょ?」 「だからって審判はさすがに・・・ジャッジミスしたらかなり恨まれるし」 「ミスする予定なのか」 断言するような口調だった。PSPの電源が切れる音がした。 「てかヤルって決めたわけじゃないし」 「・・・じゃあいい」 あ、なんかまた拗ねたなコイツ。 そんなに審判になってほしいか。 「しょーた」 呼びかけると彰太は俺の背中からずり落ち、隣に寄り添う形で向かい合った。 距離が10cmくらい。あ、顔の距離ね。 「祐輔は何になりたいの」 「え」 何って言われても・・・ 「じゃ何で俺を審判にさせたいんだよ」 うっ・・・と詰まったような返事が返ってきた。 目線を合わせない彰太にちょっとからかいを含んだ言い方で「へぇ」と口元だけで笑ってみる。 案の定コイツには効いたみたいで、俺の額を左腕でグッと遠ざけた。 前へ |次へ |
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