《MUMEI》

「それにしても、すごい人だね」
「はぐれないようにね、徹君」

私が気遣うと、徹君は…

「子供扱いするなよ」

と、膨れた。

私にとって、徹君は、『可愛い弟』だった。

(昔は甘えてくれたのにな…)

「ごめんごめん」

私が謝ると、

徹君が、私の手を握ってきた。

「? 徹君?」
「はぐれないように」

そう言って、徹君は…

天使のような笑顔を私に向けた。

(やっぱり可愛いな)

私達は、それからずっと手を繋いでいた。

…ただし、お参りの間は、手を離した。

私は、神様に…

『慎君とずっと一緒にいられますように』

とお願いした。

「ねぇ、志穂」
「…ん?」

目を開けた私に、徹君が質問してきた。

「この辺の連中は、大体ここに来る?」
「まぁ…そうね」

ここは、地元で有名な神社だった。

「ふ〜ん」
「それがどうかした?」

私は、徹君が何故そんな事を訊くのかわからなかった。

「ううん。さ、行こう!」
「うん」

徹君が手を握ってきたので、私はそれに応じた。

そして、帰りも手を繋いで帰った。

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