《MUMEI》

「服着ていいよ」

徹君の言葉に、私は慌てて上着を着た。

まだ、顔が熱い。

「可愛いな〜、志穂は」
「て…」

徹君は、私をそっと抱き締めた。

「あ〜、癒される」



徹君は、アメリカ育ちのせいか、昔から、スキンシップが…激しい。

「志穂さ〜、俺と一緒に、アメリカ、行く?」
「え?」

私を抱き締めたまま、徹君が囁いた。

徹君は、私から体を離しながら…

「アメリカの病院なら、志穂の体、綺麗にできると思う」

(綺麗に…)

その言葉に、私の心は一瞬揺れたが…

私は、首を横に振った。

「お金、かかるから、いいわ」

私は…

もう、私の事で。

家族に、迷惑はかけたくなかった。

徹君は、私の気持ちがすぐにわかったようで…

「まったく」

と、ため息をついた。

「ごめんね。…ありがとう」

そんな私を…

徹君は、また抱き締めた。
「いつか…」
「ん?」

「この傷ごと、志穂を愛してくれる男が、見つかるといいな」
「…そうね」

(そんなの、無理だけれど)
徹君の気持ちは嬉しかった。

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