《MUMEI》

1月3日。

「じゃ、私、先にお風呂入るね」

「は〜い!」

徹君は、相変わらず私の携帯を握りしめていた。

(…メール、来ないな)

…私がなかなか返信しなかったから、

…慎君に、嫌われたのだろうか。

私は、湯船につかりながら、ずっと考えていた。

(…よし)

私は、自分からメールしてみようと、思った。

「お風呂上がったよ」
と、私が声をかけると…

徹君が、携帯を切り、カチカチとボタンを動かしていた。

「? どうしたの?」
「無言電話。着信履歴から、消しとくから」

徹君が、眉間にしわを寄せながら言った。

「そう」
「うん。俺、シャワー浴びるね」

そして、徹君は、脱衣所に向かった。

私は、髪を乾かし、メールを打とうと携帯に手を伸ばした。

―その時。

携帯が震えた。

…徹君が、マナーモードにしてバイブにしておいたらしい。

『着信 仲村慎』

(え?)

私は慌てて通話ボタンを押した。

「はい、もしもし」
『俺』

聴こえてきたのは、慎君の声ではなく…

「祐希君? どうしたの?」
『あ〜詳しい事は、後で話す。そっち行っていいか?
今、駐車場にいるから』

「え?」

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