《MUMEI》
沈黙させる者。
「・・・お待たせしました。まずは彼が貴女の相手です。」
周囲を円状に囲うコーリア軍、その中央にロゼとギリスが立っている。
「千眼ギリス・イペカだ。楽しませてくれよな。」
カチャリと右腕の銃を構える。
「ロゼ・シオス。全力を持って相手をさせていただく。」

「前方に敵軍で・・」
「知っている!!」
報告に来た副官に向かって怒鳴るオデッセ。
「一刻も早く陛下の部隊と合流しないとダメなんだが・・全軍突撃だ!!」
先頭に立つオデッセが後方を振り返らずに突撃していく、己の後ろに絶対に続くと信じて。

「来ました、皇国軍です!」
「全軍一斉射撃!!」
コーリア軍の指揮官であるアヤル・ゼフが号令する。
待ってましたとばかりに、総勢1万による攻撃魔法と矢が壁の如く放たれる。
オデッセが率いている近衛騎士団の数は5千。
強固なシールドを展開しているとは言え、魔法と物理の両方をコレだけの数を放てば・・確実に被害が出る。

「はッはッはッは!!そんなモンが俺に効くかよ!!」
コーリア軍の一斉射撃を前にオデッセが顔に手を当て可笑しそうに笑う。
オデッセが手で隠していた目を前に向ける。眼前に迫ってくる破壊の壁に。
ボゥ・・
赤い・・紅蓮が吹き上がる。
オデッセが向けた視線に合わせるように襲いかかろうとしていた攻撃魔法が、矢が・・完全に散っていく。
「「炎の魔刃」「沈黙させる者」オデッセ・クーン!!命を捨てた者から掛かって来い!!」
戦場に響き渡る怒号。その言葉だけで味方の士気は上がり、コーリア軍は勢いを無くす。
生まれ持って高い魔力を体の一部に持つ特異な血筋であるオデッセ。
ある者は腕に、ある者は肩に・・とその場所は様々で持つ特殊能力も完全に異なるが・・
その力は強力であり、それ故に迫害を受けたほどである。
その中にあって、突然変異と言われるオデッセの能力は・・視界に入った物が持つ力を反転使用しその物を無効化、拡散させる。「沈黙の瞳」と呼ばれるモノ。
力を籠めれば生き物であろうと何であろうとその力からは逃れられないのだが、生き物や生き物が直接持っている物を「沈黙」させるのは相当の負荷がかかる為、オデッセは遠距離攻撃系のモノに限定してその能力を使っている。
その瞳が力を発動した際、捕捉されたモノは紅蓮に染まり、散っていくため「炎の魔眼」とも呼ばれる。
コーリア軍の一斉射撃はオデッセ率いる近衛騎士団に何の被害をもたらす事なく「沈黙」させられた。
怯え始めたコーリア軍に向かって突撃するオデッセを先頭に突っ込んで行く近衛騎士団。
コーリア軍の敗走は時間の問題。
だが今はその時間が惜しい・・
「オデッセ、悪いが先に行くぞ!!」
聞こえていないだろうなと思いながらもセイが声を上げ、そのまま戦場を駆け抜けていく。

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