《MUMEI》

「俺、あいつ、嫌い」
「徹君?」
『あいつ』とは、慎君の事だ。

「だって、あいつ…」
「?」

徹君は、それっきり、黙ってしまった。

その怒り方は、単に『酒癖が悪いから』という理由からとは思えなかった。

「まぁ、いいや。志穂、月曜日は病院?」

「うん」

徹君は、急に話題を変えた。

「俺も、林先生に用事あるから、一緒に行くね」

私は、頷いた。

同じ脳外科同士、何か話があるのかなと思った。

当日、徹君は、私の診察の後で、林先生と二人で何かを話し合っていた。

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