《MUMEI》

バレンタイン当日。

結局、私はチョコケーキを作っていた。

(ついでよ、ついで)

私は、毎年兄妹に、ビターチョコ入りのパウンドケーキをプレゼントしている。
いつもは、前日作って当日渡しているが、今回は、次の日に渡す事にした。

…たまたま、明日が日曜日だからだ。

それに、今の時期は仕事が暇だから、明日はたまたま休みだった。

そう、たまたまだ。

私は、慎君に渡すケーキを見つめた。

…たまたま、一番小さなケーキ型だったから、ハートの形になっていて

たまたま、一番得意なクラシックショコラにしてみた。

…丁度、可愛いラッピングを雑貨屋で見かけたら、たまたま、可愛く仕上げている、だけだ。

「明らかにこっち、本命じゃん」

冷蔵庫の中の箱を見ながら徹君が言うので…

「パウンドケーキだっておいしいわよ」

と、私は、焼き上がったパウンドケーキを網の上に置いて、冷ます事にした。

これをアルミホイルで包んで、切り分けとラッピングは明日行う。

―その時。

玄関のチャイムが鳴った。
私は、徹君に『かわりに行って』と頼んだ。

何となく

気まずくて、慎君に会うのが怖かった。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫