《MUMEI》

すると…

慎君が、ベランダに出てきた。

「…見つかっちゃった」
私が、照れながら笑うと…

「笑ってる場合か!
風邪引くぞ!」

グイッ

慎君が私の腕を掴んだ。

「キャッ」

私は思わず悲鳴をあげたが、慎君はそんな私を無視して、強引に、脱衣所まで連行した。

「早く風呂入って温まれよ!」
「でも、着替え…」

慎君は、素早く持ってきたと思われる『お泊まりセット』の袋から、ピンクの袋を取り出し、私に手渡した。

「え?、これ」
「大さんから、預かった。
選んだのは貴子さんだからな」

慎君が照れながら、説明した。

「何で…」
「あ〜、だから。
高山家公認で、お泊まりなんだよ、俺は」

慎君は真っ赤になってそう言うと、脱衣所のドアを閉めて出ていった。

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