《MUMEI》

慎君は私を立たせると、

「ケーキ、食べようか」
と提案してきた。

「う、うん」
私は、冷蔵庫に向かい、ケーキを取り出した。

「おぉ、すごいな」
「…ありがとう」

慎君は、私のケーキを喜んでくれた。

(嬉しい…)

「あっちのケーキは?」

慎君が、パウンドケーキを指差した。

「あっちは、兄妹と、徹君と、祐希君用…なの」
「ふ〜ん」

…本当は、祐希君もこのケーキを食べると思っていた事は、言わなかった。

「俺、本命?」
「…他に、いない」
私は、真っ赤になってうつむいた。

ずっとずっと、本命は、慎君だけだ。

「ケーキもうまいけど…」
「?」
慎君が、顔を上げた私の唇を親指で撫でた。

「こっちは、もっとうまかったな…」
慎君の言動に、私はまた赤くなった。

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