《MUMEI》

さっきまで指が出入りしていたその入口に、固い物が触れていた。

それが、…慎君自身だとわかると…正直、嬉しかった。

「ちゃんと、付けてるからね…」

慎君は、ちゃんと、私の事を考えて、避妊具も付けている事を、教えてくれた。
私が頷いたのを確認して、慎君が、ゆっくりと私の中に入ってきた。

その時の快感は、初めての経験で、好きな人と一つになるということが、こんなに特別なものとは思わなかった。

私の声や吐息は次第に大きくなり、私はつい、慎君の背中に爪を立てて慎君の名前を呼んだ。

その時。

「…ッ…」

慎君が、一瞬震えて、私の中で、一緒に、達した。

―その夜は…

幸福感に満たされていて、
あの、夏の事件以来。

私は、初めて。

薬に頼らずに、熟睡した―

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