《MUMEI》

少しすると、新人OLと、一人の男性が小走りで来た。
男性は立場上、結構高い位置に居るのだろう。
年齢は、20代後半くらいか。
その男性が、焦っているように、しかし冷静に、俺に話しかけてきた。
「こんにちは、プロジェクトリーダーの阿部です」
やはり、かなり高い位置に居た。

「君は、このチケットをどこで手に入れたんだい?」
いきなり、こんな質問をしてきた。
「今朝、ポストを開けたら封筒があって、その中に入ってたんですけど・・・?」
俺は嘘を付いた。
風が運んできたなんて言っても、信じてはくれないだろう。
「ふむ・・・。君が本当のことを言っているのなら間違いは無いはずなんだけどね。でもね、君がそれを持っているのは、有り得ないことなんだ」
「何故、そう言えるんですか」
意味が解らない。
俺は本当のことは言ってない。
だが、持っていること自体が有り得ないとは、どういうことなのだろうか。

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